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※2017年8月に開催された「アフィニス夏の音楽祭 2017 広島」の模様をご紹介しています。

INTERVIEW

招聘演奏家に聞く

2017年の「アフィニス夏の音楽祭」には、海外の名門オーケストラの首席奏者らが招聘演奏家として参加し、ワークショップやセミナー、そして開催地広島の各施設におけるアウトリーチを通し、国内の演奏家と共演しました。今回は4名の招聘演奏家のみなさんに、音楽祭の印象や若い演奏家に伝えたいことについて、お話を伺いました。

もっとリスクをとっていい。聴衆の心に響く、思い切った表現を エマニュエル・アビュールさん(オーボエ/マンハイム音楽大学 教授・バーゼル音楽院 教授)

エマニュエル・アビュールさん

初対面の演奏家仲間とのたくさんのリハーサルを通し、とても濃密で興味深い毎日を過ごしています。このような、プロのオーケストラ奏者を対象とした音楽祭というのは、世界でも他にありませんね。オーケストラに入りたてや、まだ数年という若い方々が、一週間同じ場所に集まり、室内楽曲からオーケストラ曲まで、難しい作品にじっくり取り組む。大変意義のあることだと思います。アフィニス文化財団は、すばらしい取り組みをされていますね。

若い演奏家にとって室内楽の経験は、オーケストラに戻った後も確実に生かされると思います。オーケストラの演奏には普通指揮者がいますが、良いオーケストラと共演するとき、指揮者はアイデアを投げかけるだけで、演奏家たちに多くのことを任せて音楽創りをするものです。ですから室内楽もオーケストラも、演奏者の人数が違うだけで、根本的には同じものなのです。

たとえば今回、指揮者なしの合同オーケストラではリハーサル中、室内楽のように演奏者同士の間で活発なディスカッションが行われ、その様子はまるでワークショップを見ているかのようでした。こうした音楽の創り方を目の当たりにすることで、たとえオーケストラの中でも、一人ひとりが責任感を持って演奏することの大切さに気付けるのではないかと思います。ただ指示に従うのではなく、自分で音楽を読み解き、自分だけのエネルギーを注ぎ込むことの大切さを実感できることでしょう。

参加者たちは、みんな非常にハイレベルで、モチベーションも高く、とてもよく準備しています。ただ、日本の若いみなさんは普段私が教えている欧州の若者と比べて、音楽的な質問や提案をした際、自分の意見をあまり話さないように感じます。この音楽祭では先生と生徒という感覚は取り払って、私たち招聘演奏家と普段とは違った、オープンなコミュニケーションをもっと試みてほしいですね。

若い演奏家のみなさんに伝えたいアドバイス。それは、「もっとリスクをとろう」ということです。完璧な演奏を目指すのではなく、思い切った音楽、思い切った表現を目指すことこそが、聴衆に近づく秘訣です。正確さだけをを目指した演奏は、聴衆にとって距離のある音楽でしかありません。これはとても重要な考え方です。こうした意識を持つだけで、みなさんの演奏はきっと変わるはずです。

※本記事は2017年8月22日(火)時点のインタビュー内容に基づくものです。

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ワークショップ「オーボエ・マスタークラス」では、呼吸や姿勢など演奏の基本にも触れます。

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室内楽演奏会[1]では、オーボエのあたたかな音、そして美しいハーモニーがホールを包みました。

テクニックだけでなく、自分の音楽を追及してさらなる高みへ ライナー・ミュラー=ヴァン・レクムさん(クラリネット/ザールブリュッケン放送交響楽団 首席)

ライナー・ミュラー=ヴァン・レクムさん

「アフィニス夏の音楽祭」に初めて参加したのは1999年、飯田で行われていた頃のことです。以来たびたび参加していますが、いつも完璧な運営と、日本のオーケストラに所属する優れた演奏家のレベルに感心しています。

ドイツでは、オーケストラで職を得た若者がレベルアップを目指し、1、2年間大学で勉強できるシステムがあります。しかしこの音楽祭のように、室内楽を共演しながら学ぶような場はありません。学生向けではなく、プロのオーケストラの方々を対象にしたこのような音楽祭は、世界的にも大変珍しいと思います。

室内楽を演奏する経験によって、若い演奏家のみなさんに、“ともに音楽を創る精神”を理解していただけたらと思っています。良いアンサンブルのためには、まずそれぞれが充分な練習をしておくことはもちろん、音楽について、個々が自分のアイデアを探し求め、創り上げておかなくてはいけません。慣れないことかもしれませんが、そういった考え方を磨いてほしいと願っています。

ドイツのオーケストラでは、各奏者がどう感じているか、何がしたいかがよりはっきりしている傾向があるので、おもしろいと同時に、ときには一つの作品においていくつもの表現やアイデアが生まれ、リハーサルが難航することもあります。そんなときには、お互いの考えについてしっかりと話し合い、ときには自分が引いて誰かのアイデアをサポートする立場に回る必要もあります。これは、アンサンブルをするうえで大切な考え方です。

日本のオーケストラから来た参加者のみなさんは、いつも私の考えを受け入れてくださるので、音楽創りがとてもスムーズです。もちろん、テクニックも音も本当に素晴らしい。その演奏技術をベースに自分の音色、個々の表現を深めていくことで、これまで以上に多くのお客様に感動していただける演奏家になれるように思いました。

技術を磨くために練習は欠かせません。しかし、大切なことはそれだけではありません。自分の音楽に大切なものはいったい何なのか、自身の奥深くをしっかりと見つめてください。そうすることで必ず見つかります。長い演奏家人生を通じて、立ち止まることなく、音楽を奏でることの意味を探し続けてほしいと思います。

若い演奏家たちにアドバイス、ですか? それを言葉にする必要はないと思います。何かを示すうえで、時に言葉は最良の方法ではありません。共に音楽を創る中で、きっと理解し、学んでくれることでしょう。ですから、こうしてこの音楽祭に参加してみなさんと同じ感覚を分かちあえることが、私はとても嬉しいのです。

※本記事は2017年8月22日(火)時点のインタビュー内容に基づくものです。

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室内楽演奏会へ向けてのリハーサル、アンサンブルセミナーでは参加者と活発に意見交換していました。

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ライナー・ミュラーさんのワークショップは、参加者が任意の曲を用意してのグループレッスン形式で実施。

演奏家として長く活動を続けていくためには、好奇心が大切 エサ・タパニさん(ホルン/フランクフルト音楽大学 教授)

エサ・タパニさん

この音楽祭には、プロとしてオーケストラで活動しながら、もっと学びたいという志を持った方々が集まっています。レベルも大変高く、彼らと共演できることは大きな喜びです。

普通の教育システムと異なり、共に室内楽を演奏し、コミュニケーションを取りながら学ぶことができるユニークですばらしい音楽祭ですね。私自身、オーケストラに入ったあと、さらなる向上を目指してたくさんのマスタークラスを受けたことを思い出しました。

プロのオーケストラ団員になったからといって、自分のスキルが完成したということにはなりません。まだまだその先に長い道のりが続いています。常に腕を磨き続け、どれだけ歳を重ねても、フレキシビリティを保てるような演奏家でありたい。そうして学び続けることこそが、大きな刺激になるのです。新たなコーチや先生に出会うことで、違ったアイデアがひらめくこともあります。

ただし、誰かから学びたいのなら、まず自分自身の明確な考えを持っていなくてはいけません。音楽家は、他人のコピーであってはならないのです。私はいつも生徒たちに、「演奏の98パーセントはあなた方が自分自身で創り上げなくてはならない」と伝えています。私のアドバイスを得て、そこから先は自分のやり方を見つけなくてはいけません。今回の音楽祭でかかわる参加者のみなさんにも、記憶に残る何かが伝えられていたらいいという想いを持っています。

実践は、学ぶうえでなによりも効果があります。学校の4セメスター分の授業よりも、オーケストラに入って半年で学ぶことのほうが圧倒的に多いことでしょう。室内楽も同じで、良い演奏家と共演することで一気に多くのことを学ぶことができます。良い奏者が集まれば、自然とすばらしい音楽が生まれるものですが、そこにはお互いへのリスペクトが不可欠です。ただ、普通に演奏活動をしている中では、なかなかそういう共演者に巡り合う機会がないというのが現実でしょうね。そういった意味でも、この音楽祭はとてもうまく機能していると思います。

これから先、演奏家として長く活動を続けていくということは、次の世代の演奏家が加わってくるということ。自分より若い人が加わると刺激となって変化が起こり、たいていより良いアンサンブルになるものです。ですから、常に好奇心を持ち、フレッシュであり続けることこそ、演奏家に必須の姿勢ではないでしょうか。音楽をするときはいつも好奇心旺盛でいて、心から楽しむことです。そして、想像してみてください、朝、身支度を整えて、その日の会場に出かけて行き、そこでベートーヴェンの交響曲を弾く……ほら、素敵な生活ではありませんか!

※本記事は2017年8月22日(火)時点のインタビュー内容に基づくものです。

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参加者たちの意見を聞きながら、アンサンブルをまとめていくエサ・タパニさん。

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セミナーでじっくりと創り上げてきた、モーツァルトのセレナード 第12番「ナハトムジーク」。

音に魂を宿らせて演奏してこそ、本当の音楽になる マティアス・ミュラーさん(ティンパニ/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 首席)

マティアス・ミュラーさん

今回は、「アフィニス夏の音楽祭」で初めてティンパニのワークショップが開催されました。参加者のみなさんにとって、多くの学びがあったことを願っています。私自身にとってももちろん、すばらしい機会になりました。難易度の高い曲目も入っていますが、みなさんよく準備をし、楽しそうに参加してくれてとても嬉しく思います。

人間誰しも、職に就いて家庭を持ち、自分の居場所に落ち着くと、新しい何かを取り入れようという意欲が低下するものです。プロのオーケストラ奏者となれば、日常生活の中で、練習~リハーサル~本番という、ルーティン化した毎日を淡々と送る状況に陥りがち。そんな中、この音楽祭のような非日常の場所で、新しい刺激を受けることは、とても貴重な機会だと思います。

ティンパニ奏者は、一人でオーケストラ全体の個性を左右すると言っても過言ではありません。オーケストラ全体の色付けをし、スパイスを加える重要な役割を担っています。自分がリーダーシップを発揮すべき場面、逆に黒子に徹する場面を判断する能力も求められます。そしてそれを感知するのは、各奏者の感性です。

ですからティンパニ奏者には、まず楽器の演奏技術、リズム感、音への感性という基本的なスキルに加え、オーケストラの中で、臨機応変に対応できる能力、責任感や重圧に押しつぶされないメンタリティが求められます。責任ある役割だということを真摯に受け止め、それを引き受けられるだけの心の強さが必要でしょう。

私がとても運がよかったのは、若くてエネルギーにあふれていたころ、当時ゲヴァントハウス管弦楽団の常任指揮者だったヘルベルト・ブロムシュテットが、“天狗”になっていた私の鼻をへし折ってくれたことです。彼は、打楽器はとても重要なパートだけれど、すべてがそれを中心に回っているわけではないということを、私に思い知らせてくれました。

若い日本のみなさんには、演奏家として、自分の本当の気持ちをしっかり伝えられる余裕を持ってほしい。そうすれば、演奏も変わると思います。日本には言葉に敬語があり、社会における人間関係もすごく複雑でしょうから、日常で本心を出せる場面は限られているかもしれません。それでも、自分の感情を、怖気づくことなく、喜びをもってしっかりと伝えられる演奏家でいてほしい。

私は信条として、音符をただ完璧に並べるのではなく、音に魂を宿らせてどのように演奏するかを一番大切にしています。技術的に問題なくても、本当の音楽にはなりません。弾けるようになったところから、メッセージを伝える音楽をいかにして創り上げるか。そこを大切に、勇気をもって演奏できる人を目指してほしいです。

※本記事は2017年8月22日(火)時点のインタビュー内容に基づくものです。

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演奏会に向けてのセミナーで、参加者たちと丁寧にコミュニケーションを取りながら音楽をまとめ上げます。

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音楽祭初となるティンパニのワークショップ。参加者の実演を中心に、作品や楽器の奏法について解説していきます。