海外研修リポート 森山 涼介さん(2016年度海外研修員)

日本独自の良さを高めつつ、
理想の音や表現力を追求したい

氏名

森山 涼介さん

所属楽団

東京都交響楽団

楽器

チェロ

研修年度

2016年度

研修先

ミュンヘン/ドイツ

指導者

イヴ・サヴァリ(バイエルン国立歌劇場管弦楽団)

技術的なことと音楽を表現すること、
この2つの隔たりが縮まったように思います

当財団の海外研修制度に応募したきっかけをお聞かせください。

以前より、欧州への留学願望を持っていましたが、なかなかきっかけを掴めずに思い留まっていました。応募するきっかけとなったのは、2015年の「アフィニス夏の音楽祭」でイヴ・サヴァリ先生と出会ったことです。聴く人を惹きつける魅力的な音色と、自然体で音楽に心酔する演奏姿勢に強い憧れを抱きました。欧州に身を置き、先生のもとで学びながら、より多くの質の高い音楽に触れたいという思いが強まり、その思いを先生に伝えたところ、快く受け入れてくださいました。

レッスンはいかがでしたか。

先生からは、より自然に楽器を奏でるための方法や、音楽が持つキャラクターの表現方法など様々なアドバイスをいただきました。以前は、楽器を演奏するという技術的なことと音楽を表現することが一体化していないように感じていましたが、レッスンを経てその2つの隔たりが縮まったように思います。また、レッスンや先生の出演する演奏会で、その憧れの音を聴き続けられたことは、自分にとって大変価値あるものでした。

現地の学生と交流はありましたか。

期間中は、先生の所属するバイエルン国立歌劇場でのオペラ、バレエやシンフォニーコンサート、その他のオーケストラや室内楽にソロリサイタルなど数多くの演奏会に足を運び、現地の音楽家と室内楽をする機会にも恵まれました。その中で感じたことは、音楽家個々の自己表現の強さです。アンサンブルをする上で、もちろん合わせることは重要ですが、それよりもまずは個々が音楽を表現することを大切にし、単に合わせるというよりも、方向性を合わせていくことでまとまっていくという印象でした。その結果、とても表現力に富んだスケールの大きな響きになります。これは自分にとってとても必要な要素だと感じました。

どこか別次元だった作曲家たちを一人の人として感じられた

海外での生活はいかがでしたか。

言語には苦労しましたが、現地で通った語学学校では、クラスに日本人が自分一人という中で、様々な国の若者とコミュニケーションをとるために奮闘したのは良い思い出です。イタリアで参加した講習会でも同じような経験をし、日本では出会う事のないような強烈な個性に触れ、自身の価値観や考え方の幅が拡がりました。

海外で過ごしてみて音楽面の発見はありましたか。

ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーやワーグナーなど、作曲家ゆかりの土地などを訪れ、その痕跡に触れることで、これまではどこか別次元に感じていた作曲家たちを1人の人として感じられるようになり、親しみを持って作品に取り組めるようになったように思います。また、その多くが自然豊かな土地で、音楽が生まれた環境が大きく影響している事を強く感じました。

海外研修を終えて、どのようなことを感じていますか。

私にとって大変魅力的であったバイエルン国立歌劇場、バイエルン放送交響楽団、シュターツカペレ・ドレスデンは、それぞれが独自の音と響きを持っていますが、それは、その歴史、伝統や環境が作り上げているように思います。日本のオーケストラは、世界的にみても高いアンサンブル力を持っていると思いますが、歴史においては西洋音楽や欧州の名門オーケストラに比べると浅いです。私たちが、本場の音楽から学び、さらに日本独自の良さを高めていくことで、日本の西洋音楽の質、存在価値をより高めていけるのではないかと思います。
自分自身がこの経験から学んだことを活かしながら、今後も理想の音や表現力を追求し高めていくことで、それがオーケストラや周りにとって良い影響となっていくことを望んでいます。また、これからの日本の音楽界を担う若い仲間たちに、留学の魅力やアフィニス文化財団の海外研修制度について積極的に伝えていきたいと思います。 

※2018年3月時点の内容となります。
※本文中の人名表記はご本人の言葉に沿って一部敬称略、また登場人物の所属等はすべて当時のものです。